平成27年1月1日より相続税の基礎控除が引下げされました、多くの方が相続税の心配をされるようになり節税を考えておられるようですが、今回は節税手法のうち海外に居住している場合や、海外にある財産についての相続税・贈与税の問題に触れてみたいと思います。
相続の開始時に日本国内に住所がある相続人(財産をもらう人)を居住無制限納税義務者といい、その相続人が取得した国内財産・国外財産のすべてについて相続税の課税対象になります。では、相続の開始時に日本国内に住所を有しない相続人は制限納税義務者といい、その相続人が取得した財産については国内財産にのみ相続税の課税対象とされていました。しかし、相続開始前に相続人が海外移住することによる租税回避が横行したために2000年の税制改正において一定のものは非居住無制限納税義務者として国内財産、国外財産のすべてについて課税対象とされることになりました。ではその一定のものとは日本国籍を有するもので、その相続人又はその相続人等に係る被相続人がその相続等に係る相続の開始前5年以内に国内に住所を有したことが有る場合とあります。すなわち、日本国籍を有する場合には相続人及び被相続人の双方が5年以上日本国内以外の国に住所を有しないと日本国内以外の財産についても日本の相続税の対象となってしまうことになります。なお、日本国籍を有しない者は相続開始時において国内に住所を有しない場合は国内の財産のみに相続税が課されることになり、外国人と結婚をして国籍を変更されているような場合には財産を国外に移転することによって日本の相続税への課税を逃れることが可能となります。但し、この場合においても変更した国籍での国による相続税の課税の可否に注意が必要となり、相続税課税のない国、オーストラリア・香港・シンガポール・スウェーデン・モナコ共和国・リヒテンシュタイン・ロシア・メキシコ等への国籍でかつ、その財産の所在地国も相続税課税のない国に移転しなければ実質的に相続税課税を逃れるのは難しいといえます。いずれにしても、国外に財産を移転してまで相続税の節税を図るには相当多額の財産を持っており、かつ、その財産が移転可能であるような財産(現金・国債等)でなければならず極一部の人に限られた節税手法であることになります。