今回は後継者不足に悩む中小企業者が増加傾向にあるようですので、その件について触れます。㈱東京商工リサーチによりますと、30年以上前までの中小企業の事業承継では親族以外に対する割合はわずか6.4%程度であったのに対し、5年以上前10年内の事業承継に関しては、38%程度に迄上昇しております。また、この5年以内については統計こそありませんがさらに親族以外の事業承継は増加しているものと予測されています。では親族以外の事業承継として増えているのはMBO・EBO(経営陣又は従業員がオーナー経営者の所有する株式を買い取って経営権を取得する方法)とM&A(合併と買収)があります。今は、大企業に限らず中小企業においても後継者不足により会社を役員や従業員に譲ったり、会社全体若しくは事業の一部を他の会社に売却されることもあるようです。㈱レコフの「MARR統計データ」によりますと、中小企業のM&A件数は2000年には1,119件(うち未上場企業同士は420件)であったのが2007年には1,868件(うち未上場企業同士は714件)にまで増加しております。但し、実際には役員や従業員に事業を譲る場合にはその役員又は従業員がオーナーが保有している株式を買い取る資金の問題があり簡単には行きません。また、未上場企業の合併や買収は簿外債務・労働問題(未払い残業や労働紛争)・債務保証(経営者による連帯保証債務)問題など難しい問題があり、買収側にとっても相当のリスクを覚悟しなければなりません。しかし、現実には中小企業に対するM&Aを支援する企業が増えており、純資産が5,000万円にも満たない会社もM&Aの対象となっており企業の事業承継方法が変化してきております。
親族内での後継者がいる場合には相続による分割の問題や、税金・納税資金の問題などがあり、また後継者がいない場合においても事業を簡単に廃業することもできない為に取引関係等に後継者候補を探したり、金融機関等を通じてM&Aを模索されることになろうかと思います。いずれにしてもこれらの問題は短期間で行えるものでもなく、また大変デリケートな問題でありますので長期的な戦略による計画が必要になってきます。くれぐれも手遅れにならないよう早期に事業承継に対する対策を着手されることが問題を最小限に抑える手段であると思われます。
この掲載内容は平成24年2月8日に書いたものです。