今回は、前回の話の中で例外的に記載していました生命保険金について説明します。
前回、遺産がマイナス(土地や家屋などの財産よりも借入金等の方が多いケース)で「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の3つの選択肢があることをお話しておりました。その中で、相続人の遺産の一部を使ってしまった場合に「相続放棄」や「限定承認」ができなくなり「単純承認」をしたこととされ、マイナスの遺産を相続してしまう場合について記載をしておりましたが、生命保険金については保険金を受取り使ってしまっても遺産の相続することとは別問題として取り扱われます。
そもそも、生命保険金は相続財産ではなく民法では受取人の固有の財産としており、遺産の分割協議をすることなく被保険者が死亡した場合には受取人に支払われるものです。他の財産に関しては被相続人名義の財産を相続人名義に変更する場合には分割協議書が必要であったりしますが、生命保険金はそのような手続きをすることなく保険金請求をすれば受取人に支払われます。すなわち、生命保険金については被保険者の死亡と共に受取人の財産とされます。従って、多額の借金については相続の放棄をして、一方で多額の生命保険金を受取ることも可能となるのです。(但し、住宅ローンの時に加入する団体信用生命保険など借入の返済を目的とする生命保険等は除きます。)
このことは、以前に説明をした遺留分(特定の相続人が最低限の遺産を相続する権利)についても関連してくることで、あくまで被相続人の遺産ではなく相続人の固有の財産であるため、もし遺産分割で相続人が揉める事となった場合であっても生命保険金については受取人の財産となります。(故意に遺産を少なくして遺留分を減少させたような場合について例外とする場合もあります。)
遺言書を作成するほどでもないと考えている方が多いようですが、生命保険契約の受取人を指定することによって自分自身の遺産の分割を示すことも可能であり、マイナス財産の相続回避(借入金等のマイナス財産を相続しないで、保険金等のプラス財産のみの相続すること)等・相続手続きの簡略化など相続人のためにも生命保険を有効に活用されることをお勧めします。