今回は、2世帯住宅に住んでおられた方の相続事例を紹介します。
家族構成は右の図を参考にして頂き、お亡くなりになられたのは木村太郎様で、生前妻の昌子さん、長女の鈴木明美さんとその夫である鈴木真一さんと2世帯住宅で住んでおられました。主な相続財産は2世帯住宅の敷地となっている土地(時価約3千万円)と老後資金の5百万円のみです。(家屋は鈴木真一さんが所有しておられます)
このケースでは、老後資金については配偶者である妻の昌子さんが相続されることで一致されていたのですが、2世帯住宅の敷地となっている土地については子供3人で合意に至らず、一時的に妻の昌子さんが相続することになりました。
長女の明美さんは、当初両親とは別世帯で生活をしていましたが、実家の家屋が老築化しているため建替えることになり、住宅取得を検討していた鈴木夫妻と2世帯住宅を建てる事になったのです。
両親である木村夫妻としては、住居が新しくなり実の娘である明美さんと一緒に生活が出来ることで喜んでおられ、鈴木夫妻としては2世帯住宅になったため家屋の費用は高額になったが土地取得費用が不要になったため総額としては予定していた分よりも少なくなり2世帯住宅の建築に同意されました。しかし、遺産分割について両親である木村夫妻も鈴木夫妻も必然的に土地は鈴木明美さんに相続されるものと考えていましたが、法定相続人である一郎さんと和子さんから反対されたのです。
このような場合の有効な対策としては2世帯住宅の建設前に法定相続人である一郎さんと和子さんに両親の老後の面倒をすべて鈴木夫妻が負う等の条件で遺留分(相続人の最低限の保証)の放棄をして頂くことです。(遺留分の説明は3月号参照)
一定の要件や家庭裁判所の許可が必要ですが、この手続きと遺言書をセットにすれば被相続人の意思を強く反映した遺産分割が可能になります。