皆さんは、相続と聞いて何を想像されますか?多くの方は、莫大な遺産をめぐり親族間が争いを起こしたり、遺産を隠して脱税を図ったりするイメージがあると思います。これはテレビ等の影響が大きいと思いますが、例えば、遺産は自宅の土地と家屋のみの場合で、相続人は子供3人のみ、いずれもすでに結婚をしていてそれぞれの家庭を築いており、それぞれの家庭は被相続人とは別居状態にあった場合などは、どのように遺産の分割を行ったほうがいいでしょうか?①長男がすべてを相続する。②両親の面倒を見ていた長女がすべてを相続する。③経済的に1番困難な状況に陥っている次男がすべてを相続する。④子供3人が平等に相続する。相続人3人の考え方や親族又はその配偶者の考え方、ついては、その時の相続人の財政状態によっても変わってくると思われます。私が相続問題でお手伝いをさせて頂いた中でも、裁判とまでは行かなくても何らかの不満を持ったまま分割協議書に押印されることがよくあり、決して莫大な遺産があるケースばかりに問題は発生するのではなく、被相続人に対する思い・生前の相続人たちの対応や不公平があれば何らかのわだかまりを残してしまいます。
相続問題に携わって感じることで、世代間の考えの相違と地域間の考えの相違があり、これは家督相続から平等相続に民法が改正されたことに関連しているように思います。昭和22年5月2日迄に生じた戸主の相続について旧民法は相続人1人が全ての財産を相続することとなっており、主に長男が優先されてきました。これは民法の改正により概ね相続人は財産を平等に相続するようになりましたが、必ずしも民法で定めている相続分に従う必要はなく、相続人全員の同意があればどのように分割をしても構わないのです。民法は改正されましたが長男優先の古き慣習が近年の相続においてもあり、都市よりも地方、若年層よりも老齢層にその傾向は強いように感じます。場合によっては家業を相続したのは次男であるが財産の多くは長男が相続するようなケースもあります。
財産の分割に対しては色々な考えあり、地域の習慣、親の財産形成に寄与した度合い、生前に親の面倒をどの程度見たか、逆に子供が親の面倒を見るのは当然であり、財産の分割とは別問題とする考えもあります。これらの問題を可能な限り少なくするのはやはり「遺言書」になります。残される遺族のために遺言書を作成するのが被相続人の最後の家族愛のように思います。